食物アレルギーは赤ちゃんに多く、原因となる食物は鶏卵、牛乳、小麦が大部分を占めます。
しかし、年齢が進むとアレルギーを起こす食品も変わっていきます。
2歳児・3歳児での原因食物は全体的な頻度からみると前述の鶏卵、牛乳、小麦がトップ3には変わりないのですが、この時期に新たにアレルギー起こした食物(新規発症の原因食物)となると、1位は魚卵、2位は鶏卵、3位はピーナツの順になります。(アレルギー 2016;65:942-6)
赤ちゃんのときに発症した卵アレルギーは大体7割程が治ると考えられています。
それに比してナッツのアレルギーは治りにくいと考えられ、ピーナツの場合は2割程と言われます。
ただし、この2割とは赤ちゃんのときに発症した外国でのデータであり、もう少し大きくなってから食べ始めてアレルギーとわかる日本の場合はもっと低くなると思います。
ところで、あるナッツに対してアレルギー反応を起こしてしまったお子さんがクリニックを受診した場合、多くの親御さんは他のナッツ類のアレルギーがないかも非常に心配します。
もちろん、それは当然のことです。
しかし、例えばピーナツアレルギーの患者さんでもアーモンド、カシューナッツ、クルミなど他のナッツ類は大丈夫なお子さんは結構います。
それは、ナッツ類は植物分類学上では多様な種に属していることが理由として挙げられます。
ピーナツはマメ科、クルミとペカンナッツはクルミ科、カシューナッツとピスタチオはウルシ科、アーモンドはバラ科、マカダミアナッツはヤマモガシ科、ヘーゼルナッツはカバノキ科といった具合です。
写真;おいしく治す食物アレルギー攻略法 (監修 伊藤浩明)より
とは言うものの、別種のもので交差抗原性を認めることがあり、やはり注意は必要です。
患者さんには、他のナッツ類に対しての特異的IgE抗体もチェックして安心させてから少しずつの摂取を開始してもらっています。
2月14日の午後の外来で、クルミアレルギーの5歳の男の子が、”顔が赤くなり唇が腫れた” と受診しました。
聞くと、もらった手作りチョコを食べたら症状が出たのだと。
相手の女の子の母親はこの男の子がクルミアレルギーがあることを知っていたため、男の子のママはチェックせずにチョコを食べさせました。
しかし、これは変だぞとなってチョコをよく見てみるとクルミが入っていたのでした。
幸い、男の子は診察するときには既に症状は改善していました。
私 「症状落ち着いて来て良かったですね。 ところで、相手のお母さんにクルミが入っていたことを知らせたの?」
ママ 「なんだか申し訳なくてそんなこと言えません。」
私 「そしたら、また今度もクルミの入ったチョコもらっちゃうかもしれないですよ?」
では、どうしたら相手のお母さんにこのことを言わずに誤食を防ぐことが出来るのでしょうか。
すこし考えて、私は男の子に言いました。
「別れるしか、ないな。」
ママも、一緒にいた看護師さんも笑ってくれました。
ただひとり笑わなかったのは、その男の子でした。
ごめんね。
今のは冗談なんだ。
君たちの間を裂く気など、これっぽっちもないんだよ。