私は、ハイタッチには苦い思い出があります。
それは、クリニックを開業したときのことです。
スタッフが高いモティベーションを持ち、互いに良い関係を保って仕事をしていくにはどうしたら良いか、本やネットで研究しました。
ある記事に、毎日の朝礼で各人が当日の目標を宣言し、最後に皆でハイタッチをして士気を高めようというものがありました。
なるほど!と思い、皆に提案しました。
すると、“目標宣言はいいけれど、院長とのハイタッチはちょっと・・・” と女性スタッフ皆苦笑い。
結局、最後はエイエイオーと手を挙げることになったのですが、“こっちとら、セクハラしたくて言ったんじゃね~よ” とこっそりひねくれたものでした。
それにしても、ちっちゃなこどもたちはハイタッチが好きです。
それが人生での決まり事のように、診察が終わると必ずハイタッチを求めてきます。
彼らの手慣れたタッチしぐさから、いつもやっているんだろうなって感じます。
朝、幼稚園に出かけるときは玄関でパパと、園バスでは運転手さんと、園に入るときは園長先生と、園の中ではことあるごとに保育士さんと・・・といった情景が浮かんでくるのです。
なぜ、ハイタッチをすると楽しい気持ちになり、互いへの親しみが増すのでしょうか。
当然ながら、そのひとつはスキンシップです。
スキンシップの方法にはハグもありますが、ハイタッチはハグよりもちょっと距離が開いているので、日本人にとってはちょうどいい感じなのかもしれません。
もっとも、“ちょうど良さ” は年齢やそれまでの相手との関係性で変わってきます。
だって、診察の途中に私にハグを求めて寄ってくるこどももいますし、逆に私がハイタッチを提案したら、ハイタッチはちょっと・・・と引いてしまう大人もいるのですから。
(別に、根に持っているわけではないです。)
そして、もうひとつの理由は共同作業をするということです。
ハイタッチは、喜びを分かち合う共同作業なので、お互いの信頼関係が築かれていくわけです。
以前、”診察のとき子供を泣かせない技” という記事を書いたことがあります。
http://shounikaurabanashi.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-e5f0.html
それにあるように、私は診察のとき、これは泣きそうだなと思えるこどもにまずはおもちゃなどを渡して、それを ”ちょうだい” と言って返してもらいます。
ここで、ひとつの共同作業が出来ます。
そうすると、診察を始めてもこどもが泣く確率はかなり低くなるのです。
ハイタッチやおもちゃのやり取りのようなちょっとした共同作業でも、仲間意識が生まれてくるのです。
こどもが、診察が終わって帰るときにハイタッチを求めてくると本当に嬉しいし、そんなこども達はめっちゃ可愛く思えます。
ただ、私は衛生管理上、タッチした後はしっかりと手を洗わなくてはいけません。
こどもが診察室を出たらそそくさと流し台に向かいます。
タッチしてくれる子が続くと、その度に流し台での手洗いをするわけで、ちょっと疲れちゃいます。
ちっちゃいこどものなかには、手がよだれでベロベロでの子もいます。
そんな子も、ニコニコしながらハイタッチを求めて来ます。
そういうときは、こちらも笑顔で迎え、腕を大きく振りかぶり ・ ・ ・
指先でこどもの手にタッチします。
ところで今は新型コロナウイルス感染症が流行し、握手やハイタッチは感染リスクを高くすると指摘されています。
そういえば、近頃はハイタッチを求めてくるこどもが少なくなった気がします。
ハイタッチは行わないように保育園の先生も気をつけているのかもしれません。
ハイタッチを求めても相手が乗り気でなければ、こどもたちもその気持ちを察して、だんだんやろうとはしなくなるでしょう。
ちょっと寂しい気がします。
最近は、大人ではハイタッチでなく肘タッチをしている人たちもいます。
ただ、ちっちゃい子にそれが上手にできて、皆に広まるかは定かではありません。
早く、気にせずハイタッチが出来る日が来るといいなと心から願わずにはいられません。